ヨーロッパ囲碁コングレス報告記

ヨーロッパ囲碁コングレス報告記 斎藤 修 2015年

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プラハ市街展望

 2015メール碁会通信(33)2015.8.22 掲載

「ヨーロッパ囲碁コングレス2015」に参加する「日本メール碁会」のツアーに参加したのでその状況を報告する。

7 月 26 日に日本を発ち、ブダペスト(ハンガリー)から、31日夕刻 に大会開催地のリベレック(チェコ)到着までの前半6日間は観光で過ごし、後半2日は囲碁に堪能し、最後に長い歴史を有するチェコの首都プラハをじっくり楽しむというまことに結構な日程の旅であった。なおこの報告作成に当たっては主に武田さん撮影の写真をご好意により利用させてもらった。


(秋葉さん 3 連勝)
今回の旅で一番素晴らしかったことは、何と言っても 秋葉さんが 3 連勝したことである。「日本メール碁会」のツアーで2015年ヨーロッパ碁コングレス(EGC2015)に参加したのは ウイークエンド・トーナメント(WT)であったが、国際レベルにおいての日本の囲碁の レベルが種々議論される中で、堂々と3連勝されたのは真に素晴らしいことであった。

世界の一流の打ち手が集まる中、まだ世界では名前が売れていなかった秋葉さんの3連勝は真に画期的な成果である。全ての対戦がハンデ無しの対戦ルールであり、勝を続ける と当然次の対戦相手も勝ち続ける強い打ち手が選ばれる仕組みになっている。4戦・5戦目は勝ちに恵まれなかったが、一般対局者の会場とは離れた特別会場での対戦で思い切り持てる力を発揮して戦った秋葉さんの健闘を讃えたい。 世界の囲碁の最高レベルの場での3連勝、秋葉さんとしても充足感に満ちた時間であったのではないか。 次の機会にはさらなるもう一歩高いポジションへの期待を生み出しうる成績ではなかったかと推測されるものであった。 秋葉さんの一層の精進とメール碁会の期待にこたえる今後の成果を期待したい。


(EGCにおける望田さんの活躍)
ハイウェイがプラハ周辺で渋滞してリベレック到着の遅れが心配され、「リベレック周辺の街中通過時間を考慮するとかなり到着予定がずれ込みそうだ」とバスの中で話しているさなか、ハイウエイからリベレック市街への分岐路に入ってすぐ、まだリベレックの郊外だとみられ るときに、いきすぐにホテルが現れ、街中の渋滞に時間をロスすることなくホテルに到着できたのには驚いたが、おかげでホテル到着が思いの 他遅れなくて済んだのはうれしいことだった。

リベレックの会場ホテル前にておかげでホテルの正面に出て我々を待っていてくださった望田さんにもあまりご迷惑をかけずに済んだ。我々メール碁の会員でもある望田さんは十数年間続けてEGCに参加されているベテランで、日本からの連続参加者が減りつつある中、変わらずメイントーナメント(MT)に参加 されている奇特な方で、今回も我々日本メール碁会ツアーグループの1週間前からここリ ベレックで頑張っておられる。ホテルロビーで早速望田さんから会場内外の様子などの説明をしていただき、まず各自部 屋に旅装を解くのもそこそこに、直ちにEGC会場に向かう。

EGC会場 はホテルに隣接した遊園地内にあり、ホテルからは廊下で繋がっているが地形の高低差があるうえ、遊園地の構造が複雑で分かりにくく、あまり遠くないEGC会場に到着するのに結構時間がかかり大変だった。望田さんのご案内がなければEGC会場到着 に何時間もかかったであろうと想像される状況であった。 まずEGC事務局に会場到着を通知する用紙を提出したあと、会場を偵察した。WTの会場(左図)は300を超す碁盤が並べられた大きな部屋で、 壁に小さな紙で 登録者の名前が貼り出されていたが、その紙面に我々の名前はなく、事務局に問いただすと今我々の到着を確認したばかりで明日の試合会前までにあらためて表示するとの ことであった。

我々のEGC初日はこれでおしまい。望田さんらと遊園地内のピザ屋で明日からのEGC 参加に期待と一抹の不安を抱きながら夕食をとった。

なお帰国後の情報によると、望田さんの戦績は、MTが5勝5敗、WTでは2勝3敗のほぼ打ち分けであったよし、さすがの成績!! お一人で2週間余にわたる旅をされEGCに長期連続参加されているその気概と熱意とともに上げられた成績にも感嘆の念を禁じ得ない。翻って自分の戦績を見るに慙愧に堪えず、深甚なる反省の必要性を痛感した。(つづく)

(ヨーロッパ最後のプラハ観光)

囲碁コングレスも終わりプラハに移動、プラハでヨーロッパ最後の観光を楽しんだ。

プラハは神聖ローマ帝国時代からの首都で、6世紀後半にスラブ民族によりモルダウ河畔に集落が形成された。9世紀後半にはプラハ城、10世紀頃にヴィシェフラト城が建てられ、両城に挟まれたこの地に街が発達した。973年にキリスト教の司教座が置かれると、ユダヤ人の入植が始まったが、プラハは度重なる戦渦に巻き込まれ、荒廃してしまう。

1346年にボヘミア王カレル1世が神聖ローマ帝国の皇帝に選ばれ、カレル4世(独名カール4世)となると、神聖ローマ帝国の首都はプラハに移され、プラハ城の拡張や、中欧初の大学、カレル大学の創立、カレル橋の建設とモルダウ川東岸市街地の整備などの都市開発が行われた結果、ローマやコンスタンティノープルと並ぶ、ヨーロッパ最大の都市にまで急速に発展。「黄金のプラハ」と形容されるほどになった。

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プラハ城内の聖ヴィート大聖堂をバックに

(ヴォルタヴァ川ディナークルーズ)

ツアーの最後はプラハの中心を流れるヴォルタヴァ川のクルーズで優雅に楽しんだ。

川沿いに点在する歴史遺産を船のデッキから眺めながらビール・ワイン或はジュースとそれぞれのお好みの飲み物を飲みほしながら、ツアーで今回まわって来た素晴らしい街々を思い起こしながら、またある時はヨーロッパの古都に惜別の思いに浸りつつ最後の夜を楽しんだ。途中水位を調整する水門を通ったのが珍しかった。さようならヨーロッパの街々よ! いつの日かまた相まみえん。

(日本の囲碁界)

ツアーの途中に日本の囲碁界の状況について内久根さん秋葉さん、吉田さんらと話あった。

話題は世界における日本囲碁のレベル、段位制の在り方、日本囲碁界の改革の必要性などであるが、東京駅前にある「いずみ囲碁ジャパン」の休止の事も話に出た。東京オリンピックに関連する八重洲地区開発に基づく話のようである。内久根さんは、日本棋院の閉鎖性・保守性とともに改革の必要性を熱意を持って語られ、日本囲碁界改革の熱意には我々囲碁を愛好する者の胸に響くものがあった。

現在既に菊池さんをリーダーにする全日本囲碁協会(全碁協)が発足し、「小中学校での囲碁の正課取り上げを要望する10万人署名」運動を始めているとのこと、この運動を多くの囲碁愛好家の間に広げたいので協力をしてほしいとのことであった。私はこの問題を日本メール碁会でもぜひ真剣に議論すべきであると考えます。

(感想)

世界の各地を回ってみるとそれぞれに立派な都市や街が多い。聞いてみると立派な都市は皆現在あるいは昔のある時期世界のトップクラスで輝いていた時代を経験している都市である。世界にはまだまだ多くの立派な都市があるに違いない。まだ訪問していない都市訪問の旅を続けたい気持ちはあるが、年齢その他の客観情勢が許すかどうか、それが私にとって重要な問題だ。それぞれの街の歴史をその土地の人から聞き、さらに資料を調べると勉強になることが多く、見聞が広くなり智識も豊富になる。旅の醍醐味である。

今回のツアーでは碁の成績は上がらなかったが、ウイーン、プラハを始めとする素晴らしい歴史を持った都市を始めとしてさらにセンテンドレ、チェスキープルムロフといったあまり見る機会の少ない珍品級のダイヤモンドの様な都市を見る事ができた。

また、秋葉さん・武田幹事・吉田幹事・吉開さん・内久根さん他の皆さんから旅の折々に沢山の事を学ぶことができたことは私にとって大きな収穫であった。私個人としては何となく低調気味であった碁の調子を取り戻したい、そのためにしばらく休んでいたメール碁会の対戦に挑戦の意欲がわいてきた。

最後に改めてツアーにあって多くのお世話を頂いた武田・吉田の両幹事にお礼の言葉を述べさせていただきたい。大変お世話になりました。有難うございました。

毎日観光と仲間との碁に明け暮れて結構忙しい、充実した毎日を過ごすことが出来ました。ツアー碁同行の皆様お世話になりました。有難うございました。なお最後になりましたが、青山さんが3勝2敗:花丸の成績を上げておられる事を追記させていただきます。(おわり)