2020メール碁会通信(38)
2020.9.26
大西竜平・七段へ昇段 清永 忠
棋士デビューから5年、「竜虎」と称された大西竜平(20)が、大化けの気配を見せている。快進撃にもまして、盤上に発露する独創的な感性が、棋士仲間を驚かせている。故・藤沢秀行名誉棋聖に冠された「異常感覚」を継ぐ者は、彼かもしれない。大西は、本因坊戦最終予選決勝で河野臨九段を破り初のリーグ入りを決め、五段から七段に飛びつき昇段した。 名人、棋聖、本因坊戦3リーグの座は「黄金のイス」と呼ばれ、リーグ入りは一流棋士の証しとされる。
名人戦も8月20日の予選A決勝で大橋拓文六段に勝ち、最終予選に進んだ。3リーグすべてに名を連ねる「トリプルリーガー」は、タイトルホルダーを含めて第一人者の井山裕太棋聖・本因坊と「令和三羽ガラス」の一力遼碁聖、許家元八段の3人のみ。
最近の大西の急伸のワケには、AIに触発された囲碁観の覚醒があるようだ。余人が思いもつかぬ奇手がよく飛び出る。「前はAIの打つ手が全然理解できなかったけど、自分なりに解釈する力がついてきたのかな」。
現代碁は相手の勢力を恐れず、序盤からどんどん陣地を稼ぐ傾向にある。一方大西は、序盤からどんどん相手に陣地を与える。 それでいて中終盤には追いつき、追い越している。AIに対する解釈が他と違うのだ。早稲田大学社会科学部3年の学生棋士。進学せず棋道に専心する棋士が多いなか、大学に進んだのもAIの影響だ。「棋士としてもプラスになっています。盤に向かったとき視野が広がったと思います」。独自の成長軌道を描き始めた大西。先行する「令和三羽ガラス」に並び立ち、「令和四天王」の時代がやって来るかもしれない。
